関西学院大学丸の内キャンパスにおいて、二ホンヤマネ保護研究グループとの共催でヤマネの保全策等に関するミニシンポジウムを開催しました。元英国ロンドン大学の教授で、哺乳動物の権威Pat Morris先生をお招きし、九州や名古屋、新潟からもお越し頂き総勢25名で当会理事の饗場さんの司会のもと、ミニシンポジウムを開催しました。通訳は当会の吉田さんにお願いしました。
- モリス先生には「イギリスの哺乳類の特徴と保全」について基調講演頂きました。更新世の地殻変動でイギリスに渡れなかった哺乳類、絶滅して再導入すべきか検討を要するもの、そして現在在来種として44種存在。外来種はやはりシカの増加が問題であり、ニホンジカの被害も多い。アナグマやカワウソ、ハリネズミも人気があるがそれぞれ問題があり、保全に動物名のついたそれぞれの保全団体があり、しかも遺贈等で割と資金が潤沢なようです。ハリネズミマークのついたビールによる寄付などもユニークでした。
- 「ヤマネの保全と減少」についてミニシンポジウム
- モリス先生からは「なぜヤマネが希少なのか?私たちが何ができるのか?」についてお話がありました。イギリスのヤマネの食痕は特徴的で、この木の実の食痕分布から100年前に比してその分布域は半分に減少。巣箱がかけられている地域での捕獲数が多い。全国ヤマネモニタリング・プログラムが推進され、市民を巻き込んで食痕の見分け方などのトレーニングを行い、全国253地点でモニタリング実施し、成果を上げてる。食べ物などからの森林の管理方法が重要。また家畜などが冬眠地を荒らすことを防ぐなど日本との違いもある。ヤマネの生息には20ha以上の森が好ましく、生息地の連結が重要。ヤマネにとっての問題:冬の気温変動、温度が高い夏、夏の始まりと終わりの期間の不明瞭海洋性気候は大陸性気候より不安定(いずれも温暖化との関係もあり)、故に生息地の管理がより重要。再導入の実験も開始してる。ヤマネは森林の指標。ヤマネにとって良いことは他のことでも良いはず。
- 湊先生からは「二ホンヤマネの減少と保全」についてお話がありました。
二ホンヤマネの分布で、生息への警告として生息していない地域があり、造山運動や開発が関係。同じ遺伝子集団も分断の危機。清里の事例では確認個体数が急激に減少。要因として植生の変化、捕食者の増加、積雪量の減少、気温上昇、生息地の分断がある。 - グループディスカッション:ヤマネを保全するにはどうしたらよいか?アイディア募集。4名程度のグループで話し合い、一般市民などへのヤマネの認知度のUPやその方法、植生や沢筋の保全、シカなどの野生動物管理、ヤマネの巣箱数の増加、飲料メーカーとのコラボ、SNSの利用など様々なアイディアが出ました。