Q&A

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アニマルパスウェイについてのお問い合わせ


Q1. アニマルパスウェイの目指す目標は何ですか?
A1.   

(1) ヤマネだけでなく、日本の樹上動物のためのコリドーを建設することを目指しています。
(2)そのため 動物たちが通りやすくする工夫をすることが重要です
(3)また、道路上なので、下を通る自動車や人の安全はもちろんアニマルパスウェイを
利用する 動物たちの安全を図ることも重要です。(天敵対策)
(4)さらに 安い価格でできる工夫をすることも必要です。(自治体などの道路管理者
の負担からできるだけ少なくするため、廉価なものを既存材料で工夫)
(5) だれでも、どこでも実施できるようにすることを目標としています。


Q2.   アニマルパスウェイの天敵対応で考えている基本原則は何でしょうか?
A2.   建設地に生息する天敵への対応策をできるだけ考え、設計に活かしています。
(1)ヤマネ研究の蓄積とやまねブリッジの対天敵構造を設計に活かしています。
やまねブリッジでは、大きめのメッシュの網で覆っています。それは、ヤマネが出入りできるサイズ(約3㎝)ですが、テンやフクロウの出入りは困難であるため、天敵は外からも内部への攻撃は困難となる。そのような考えでやまねブリッジ建設し、建設後、ヤマネは1ケ月以内に繁殖巣を形成しました。ヒメネズミ、シジュウカラも繁殖しました。この実践を参照にヤマネたちが天敵から自由に行動できる設計をアニマルパスウェイにも取り入れました。
(2)げっ歯類・リス・一般哺乳類などの研究者に相談し、設計に活かしました。
日本の哺乳類学会の役職にある方、海外のヤマネ研究者、リスなど哺乳類の本を日本で出版されている方に相談し、その知見をいただきました。
(3)天敵対策についても同様です。
多様な動物を研究している上記研究者等に相談して建設したこと
リスについて:上記研究者と現地において相談と実証実験では針葉樹の近くに建設し
ました
理由:針葉樹は常緑の葉を有するので、空からの天敵に対してリスが隠れることがで
きます。
テンについて:上記研究者と相談。上記研究者の研究蓄積を活かしたこと
テンに対しても十分対応してアニマルパスウェイを利用できるとの意見をいただいたヒメネズミは、アニマルパスウェイ上でボクシングなどを行う事例も観察しています。
フクロウについて:日本・山梨で野鳥を保護研究している方にも再確認、フクロウの
捕食行動から攻撃されないような設計としました。
フクロウは被捕食者に空から音の発生を抑制する翼で高速で近づき、足で被捕食者を捕まえる。その際、翼を広げ、ブレーキとする。それで設計を以下のようにしました。
①柱である三角枠の金具を施し、そのフレーム間の距離を25とした。翼長が約80㎝を有するフクロウが羽を広げてアニマルパスウェイ本体に突入できなくしました。
②屋根の各所をアルミニウム覆うことで空から、あるいは横面から、アニマルパスウェイ本体に突入できなくした。同時に屋根は積雪対策も有します。
③アニマルパスウェイ本体に三角柱を設置し、天敵から隠れ、避難場所としました。
④日本・山梨で野鳥を保護研究している方にも、フクロウによる捕食が現アニマル
パスウェイでは困難であることを再確認いただいた。


Q3.   樹上性野生動物を対象にした海外の類似事例はありますか?
A3.  

1) イギリスにおいて
細かなメッシュの金網で覆ったやまねブリッジは、2回視察しましたが、何年経てもヤマネは利用しなかったようです。この失敗の要因は、ヤマネたちが、ブリッジ内部にいたときテンなどの天敵が侵入した場合、逃げる・隠ることができないことにあると考えられます。
2)イギリスの方による発表
細かなメッシュの金網で覆った試験型のやまねブリッジもヤマネは利用しなかったとの報告。他のブリッジもイギリスでは失敗事例が蓄積しています。
3)オーストラリアではポッサム類が使っている樹脂製ワイヤーメッシュの橋があります。またブラジルでも事例はあるようです。


Q4.   清里のヤマネの生息数は増えていますか?
A4.   清里でのヤマネの生息状況は1988年以来、現在に至るまで減少傾向にあります。したがって、清里ではアニマルパスウェイ建設時も現在もヤマネの生息数は他の地域より多いと言える状況ではありません。(多い、少ないの基準も困難です)その状況下で、清里のアニマルパスウェイでは、モニタリング2674時間で利用回数は、1510回の総利用数の中でヤマネは約20%となっています。また、清里では建築後、18日でヤマネが利用し(ヒメネズミは17日)、これらは、アニマルパスウェイはヤマネにとり有効なコリドーであることを示しています。


Q5.    アニマルパスウェイは小動物に限定できないものでしょうか?
A5.    アニマルパスウェイは、ヤマネだけが利用することを目的としたものではありません。日本の樹上動物が利用することを目指しています。


Q6.   テンが通れないような工夫ができないものでしょうか?
A6.   (1)実際のモニタリング映像からテンがアニマルパスウェイに入る際、アニマルパスウェイに隣接する枝を伝ってきました、その後、ヒメネズミが来て、その枝で立ち止まり、臭いをかぎ、その後、利用しました。ヒメネズミはテンの存在を知り、その上で利用しています。
(2)ヒメネズミは三角枠のシェルターを2つのアニマルパスウェイで高頻度に利用しています。これはこのような場所がヒメネズミにとり有用であることを示しています。
*このようにテンが現在、利用動物を捕食している事例はありませんがさらに、対テン対策をさらに考えてまいります。


Q7.   フクロウが那須で待ち伏せをしているようにみえる映像から、フクロウ対策は?
A7.   フクロウの捕食行動を示しているように見えます。あの映像の状況ではアニマルパスウェイ上ではフクロウの通常の捕食行動はできません。ヒメネズミ、ヤマネたちは、十分に対応できると考えています。日本各地の約1万時間のモニタリング映像でも、フクロウの捕食行動はゼロである。フクロウが攻撃することは、非常に困難です。


Q8.   ヨーロッパ型のネットで完全に覆うにできないものか?
A8.   イギリスでは上記のように金網で覆うアニマルパスウェイを実施していましたが、失敗が重なりました。また、別のタイプも失敗しました。それでイギリスの自然保護団体からこちらのアニマルパスウェイ設計図を欲しいとの依頼があり、設計図などの情報を送りました。それを基に2015年ワイト島で建設され、建設後直ぐに、ヤマネたちが利用しました。これを成功事例としてBBCが番組を作成し数百万人が視聴し、日本からの案であることも放送されました。


Q9.   アニマルパスウェイ内にシェルターを設けたとしても小動物の天敵が獲物の小動物と接触できる構造は不適切と考えますがいかがでしょうか?
A9.   上記に示したようにヒメネズミは利用しています。利用していることは必要なからです。


Q10.   野生動物を人為的に誘導したアニマルパスウェイで、利用した小動物が襲われても「仕方がない」のでしょうか?
A10.   「仕方がない」などと考えたことは決してありません。懸命に動物の保護を上記のように考え対応策を実施しています。同時に、さらによい方法を探りながら実施しています。建設場所により自然の状況が異なるので、そこでの天敵対応も懸命に行っています。


Q11.   夜行性の小動物が夜間の車の通りの少ない森の中の道路でロードキルが発生する確率より、アニマルパスウェイが「獲物が通る場所」として小動物の天敵が学習し、頻繁にアニマルパスウェイを訪れ、その場にいた小動物を捕食するリスクの方が高いのではありませんか?
A11.   約1万時間のモニタリング映像からそのような事例と攻撃行動はありません。同時に、我々はさらにそのようなことが起こらないようにさらに研究活動を進めていきたいと思います。


Q12.   モニタリングの天敵の映像を公開しないのでしょうか?
A12.   当会はすべて公開を原則にしており、テンはHPにすでに動画映像を公開しており、フクロウについても展示会や学会にて映像公開しております。


Q13.   清里のヤマネ巣箱調査による確認個体の減少は、長野県林務部にお勤めの小山先生の講演を拝聴した際に、森の木々の成長と共にヤマネの餌となる液果を実らす木の種数が減っていることが一因にあると伺ってます。 しかしながら清里のヤマネ生息数につきまして、私が収集したヤマネ目撃事例では八ヶ岳の山麓のヤマネ目撃情報は全国で一番多く、生息数も多いのではと感じております。
A13.   清里はやまねミュージアムがあり、湊先生の著書あるいは多くの研究者が来られる場所でもあります。また山梨放送などでも多く放送され一般への認知度も高いために近年の目撃事例はおのずと高いと思いますので、北杜市の八ヶ岳南麓と他の地域の目撃情報を比較し、八ケ岳にはヤマネが多いといわれるのは、八ヶ岳南麓でのヤマネの個体数が多くいるということに繋がらないのではないかと思います。 やはり毎年の森林に生息する個体数の増減を把握し、推測する方法の方がベターではないでしょうか?


Q14.   アニマルパスウェイ初号機を観察させて頂いた折に、「アニマルパスウェイがあることを小動物に学習させる」目的で餌付けをされていましたが、アニマルパスウェイの小動物利用状況の情報開示の際にその点の言及と、餌付けされている時の小動物の利用状況と餌付けを中止した以降の利用状況が変化しているのか?していないのか?ご教示頂ければ幸いです。
A14.   確かに餌付けは、アニマルパスウェイの認知を高めるのに役立ち、その間は出現回数は多いと思いますが、しかし個体数はそれほど多くないと推測されます。同時刻での別個体の出現は明らかにわかるのは最大2個体で、利用している個体もヤマネのテリトリーから考えてもそれほど多くないのではないかと思います。なお、1号機、2号機とも季節変動は大きいですが、餌付けをしていない2009年(この時のヤマネが55%の利用率)、2012年、2015年の調査でもヒメネズミ、ヤマネの利用は見られています。


Q15.   テンをアニマルパスウェイの利用者ではなく利用動物の天敵と認識され対策をご検討中とのことで、アニマルパスウェイのサイズ変更はいかがでしょうか?リスまでが通れるサイズで、ムササビやモモンガは支柱間を滑空させることでアニマルパスウェイの利用対象動物から外してもいいのではと思います。
A15.   ご専門の先生方のご指導を受け、ムササビでも滑空しなくてよいところは伝い歩きをするとのことで、アニマルパスウェイも十分利用する可能性があります。モモンガは小さいのでサイズ変更しても余り排除する意味はないと思います。 逆に場所によってはより多様な生物多様性保全のためには大型化が必要かもしれません。(ヨーロッパやカナダ等の大型のブリッジには樹木も植えられ、ヤマネも地上性動物も移動できます。コストが掛けられれば、こちらがベターかもしれません) なお、北海道のエゾモモンガ用の支柱はあくまで、周辺に高木が成長するまでの仮のものだということを指導された先生から教わりました。また、テンも場所によっては希少種ですね。 テンが小さな巣穴から捕食した事例があるかもしれませんし、テレメーターの発信機がフクロウの巣穴で見つかった例なども聞いたことがありますが、森の中は毎晩追いかけっこだと思いますので、樹洞であろうがどこでもパスウェイと同じ状況であると思います。ヤマネは屋根上でも床下でもどこでも伝わって移動します。テンよりすばしっこいですね。要は森林の生態系保全に意味があり、バリヤーとしての道路をどう繋ぎ、多様な動物を安全に行き来させるかにあるのではないでしょうか?


Q16.   イギリスでのメッシュ金網のブリッジは天敵が侵入した場合、逃げる・隠れることができないこと」を失敗の要因に挙げられてますが、同じく金網で覆われたヤマネブリッジはヤマネをはじめとする小動物が繁殖巣を造り利用したとのことで、イギリスの失敗は敷設距離の長さや設置ポイントのミスマッチが原因と思われるのですが、いかがでしょうか?
A16.   日本のヤマネブリッジはメッシュが大きくどこからでもヤマネやヒメネズミは出入りできますが、イギリスののもはメッシュが細かいと理解しています。そのため、イギリスのPTESはそのため日本オリジナルの形を取り入れ成功したことによりBBCで放送され、さらにその他の地域への普及を目指しているとのことです。


Q17.   ヤマネに関しましては電線の碍子カバー内での繁殖が確認されていまして、すでに電線がアニマルパスウェイの役目をしていると思います。 またヤマネの目撃情報を収集しておりますと、「森を通る道路をヤマネが通れない」と情報発信されていらっしゃることに違和感を感じています。 実際に道路や地面上でのヤマネ目撃例が多く、樹木のない尾瀬等の木道や高山の岩稜帯、高山の森林限界にある登山道など、ヤマネをはじめとする小動物はアクティブに行動していることを感じています。その中であえてアニマルパスウェイにヤマネをはじめとする小動物を誘導し、ロードキルの可能性を低減されているとのことですと、一般道上のアニマルパスウェイ設置より、高速道路上でのアニマルパスウェイ設置の方が、効果は高いのではないでしょうか。 既にご計画されているかもしれませんが、早く高速道路上へのアニマルパスウェイが数多く設置されることを祈ってやみません。
A17.   “電線の碍子カバー内での繁殖が確認”されているかもしれませんが、電線にはネズミ返しが取り付けられているものもあり、電線が一概に樹上性動物にとってアニマルパスウェイの役割を果たしているとは言えないのではないでしょうか? また、実際にヤマネが市道上でロードキルに会っているのは現実に認識しており、森の道路を横断しないとは断言していません。森の中の地上を移動する場合もあることも十分承知ですが、幅員のあるアスファルトの自治体道自体はかなりのバリアーになることは否めません。ですから渡らない場合も多くあるのではないでしょうか?また林道や自治体道ではロードキルも多く、リスなどの轢死体の目撃事例の多い場所もあります。車の速度制限も重要かと思います。 もし、ロードキル事例をご存知でしたら是非アニマルパスウェイの設置候補地のひとつなのでご教示ください。 アニマルパスウェイは既存の道路約126万kmの高速道路以外の道路にこそ設置すべきです。高速道路は1万kmにも及びませんし、もちろん設置は推奨されますが、ほとんど新設の段階での計画が必要で、もう少しコストが掛けられるのではないでしょうか。ただしより安全かつ高品質な構造が求められます。高速道路や国道を主な研究対象とされている道路生態研究会とも一緒に研究していますので、将来あちこちに架かると良いと思います。


筑波大学八ヶ岳演習林の杉山様から頂戴したご質問やご意見をものをQ&A形式に直して掲載させていただきました。